法律の力を知って、どん底から這い上がる|田島隆
第35回コラム
- 船の建造や売買などに関する海の法律の専門家である海事代理士や、個人や企業が役所に提出する書類や各種契約書などを代理人として作成する行政書士の資格をもち、法律職として活躍している田島隆さん。常盤貴子さんや山下智久さんの出演でテレビドラマ化もされた漫画『カバチタレ!』や『ダンダリン労働基準監督官』、『極悪がんぼ』、『びったれ!!!』などの原作者としても知られている。今でこそ有名人で、誰からも人生の成功者と思われるような田島さんだが、その少年時代は壮絶だった。
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親から日常的に暴力を受けたり、家事をほとんどしてもらえなかったりと複雑な生活環境で少年期をすごした田島さん。経済的にも苦しい家庭で、田島さんは「早く、働いても良い年齢になって家を出て行きたい。早く、自分ひとりで生きていけるようになりたい」と思うようになったという。そこで、中学生でもできるアルバイトとして目をつけたのが新聞配達だった。
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当時について、「一般に、“新聞配達は貧乏な家の子がするもの”というイメージがあって、最初はクラスメイトなどに知られるのが恥ずかしかったのですが、徐々に働くことに誇りを感じるようになりました。テレビもない家なのに、お金を貯めて自転車とヘッドホンステレオを買ったことは強烈に覚えています。学校のみんなは、親にねだって買ってもらっているのに、“オレは自分で稼いで買っている”と自負していました」と田島さん。
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また、「好きな女の子の家に新聞を配るのが楽しみでした。ところが、ある夏の朝、たまたまその子の2階の部屋の窓が開いていて、パジャマ姿の彼女と目が合ってしまったんです。よっぽど恥ずかしかったのでしょう、それ以来、ひと言も口をきいてくれなくなりました」という、今となっては甘酸っぱいエピソードも披露してくれた。
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新聞配達の仕事は中学2年から高校の途中まで行っていたが、その間も過酷な出来事が続く。中学2年で両親が離婚すると、高校1年の冬に経済的な事情で、親から言われ家を出て独立して暮らすことに。さらに、高校に内緒で校則違反のアルバイトでしのいでいたが、生活の維持と学校が両立できず、高校を中退。以降は、トラック運転手や生花店、クリーニング店、営業マン、ビル清掃業など30種類以上の仕事を経験するも、高校中退の学歴も障壁となって食うや食わずの日々を送っていた。
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転機となったのは20歳のときの運転代行の仕事でのトラブル。田島さんは、社長の誤解から賃金未払いのままで会社を解雇された。しかし、労働基準監督所という役所に相談したところ、一通の内容証明郵便を送っただけで賃金が支払われるという経験をする。それからは法律のもつ力に目覚めて猛勉強し、海事代理士と行政書士の資格を取得して独立開業。そして28歳のときに、法律業界でも話題となっていた、故・青木雄二先生の漫画『ナニワ金融道』に出会う。
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一ファンとして、青木先生にファンレターを送った田島さん。その内容は、自分の海事代理士としての経験に基づいた漫画のアイディアだった。すると実際に青木先生から連絡が入り、田島さんのアイディアは『ナニワ金融道』に採用されることに。これをきっかけに田島さんは各種漫画誌に連載を次々ともつようになり、書籍を何冊も出版、さらにはラジオのパーソナリティなども勤めるなどマルチな才能を発揮している。
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そんな田島さんから新聞奨学生のみなさんに、「30種類以上の職に就いてきましたが、新聞配達は自分の原点。小学生時代いじめにあっていた私は、新聞を届けて感謝されたり、声をかけてもらったりして、とてもうれしかったことを覚えています。新聞配達をやれて幸せでした。みなさんも今は大変かもしれませんが、奨学生制度を利用して働けていることをラッキーと思ってみてはいかがでしょうか」との言葉をいただいた。
たとえ苦しいことがあっても、ちょっとした発想の転換で「自分は恵まれている」と考えれば、乗り越えられることがあるかもしれない。
- *新聞配達をした著名人を知っている方はぜひ編集部までお知らせ下さい!
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